dokusyomemoのブログ(読書感想)

ぼちぼち読んだ本の感想を書いていきます。

「ハイデガー哲学は反ユダヤ主義か」

・2014年の初めに、ハイデガーが「黒ノート」と称していた手記が出版された

・その内容は現在の水準からすれば「反ユダヤ主義」としかいいようがなく、従来のハイデガー像は変更を余儀なくされている

・反応としては、これをもってハイデガーの思想全体を批判するもの、ハイデガーの思想から切り離そうとするもの、精細な位置決定をもとめるものに分かれている

・黒ノートからの引用は43ページに少し掲載されている。もっとも驚いたのは引用②で、この箇所はハイデガーが自らの存在史に反ユダヤ主義を密接に関連させて考えているようにしかよめなかった。

・本書は論文等の集積からなるけれど、そのおおくはハイデガー哲学において黒ノートがどう関わってくるか、という点を、関連する既存のハイデガー哲学と関連させながら論ずる、という形式。

ハイデガーの批判する「形而上学的=歴史的」《ユダヤ性》を、レヴィナスは「場所からの自由」として、積極的に評価している、という指摘。

・「黒ノート」の形式上の問題もあるにしても、また実際に読んだわけでもないのであまり確言はできないけれど、読んだ感想としては、「なぜこのような粗雑な形で当時の歴史的、政治的な現実を取り込むことになったのだろうか」(144)という疑問に同意した。